世界情勢Ⅱ

凍結の影響が少ない南半球と北半球の一部では、次第に船を中心とした小規模組織が形成され、嵌合種と呼ばれる新たな知的生命体との共同体が育ち始める。
時が経つにつれて組織同士は吸収合併を繰り返して巨大化し、自治都市と化すものが増えてくると、少ない領土を拡張するために組織同士の衝突が頻発。
大規模な戦争への発展を防ぐために国際艦船連盟が各組織のリーダーへの連携を促し、派生組織である人類補完扶助センターを設立。「人類と新たな命のために」のスローガンを掲げ、全ての組織が【人類復古】のために力を揮うこと、また人類のための活動はまわりまわって自分たちの生活水準の上昇につながることを意識させた。これにより、組織ごとの賛同するせざるを問わず、一旦は組織間衝突の緩和がなされる。
しかし理想は少しずつ歪むものであり、2000年余を経るうちに、平和と復古のための連帯は過剰な抑えつけへと姿を変えた。
長く「現地民」として生息する嵌合種たちだけでなく、設立当時を知る船の中にも不満の色が見え始める。
何よりも、どれだけ尽力しようが、依然として『人類』は戻らないのだ。